北京で働く男

長く、とっちらかった備忘録

上海ディズニーでは一人あたり20元(約300円)しか消費していない...? その2

入園券を含む1人当たりの平均消費金額は、515元(約7,828円)。約500元(約7,600円)の入園券を差し引くと、ゲストがパーク内で消費する金額は20元(約300円)にも達しない

というニュース記事を受けて、

 ディズニーパークの売上を構成する下記の4要素

① チケット

② 飲食物

③ パークホテル

④ ショッピング(グッズ)

このうち②〜④が上海のゲストにはあまり響いていないという推察を行い、①、②について前回の記事で検証を行った。今回はその続き、③、④について

 

③パークホテル

パークホテル事業の成長には、「1日で回りきれない」くらいパーク内外の施設の成長が必要

正直稼働率のデータがないので、ホテル事業がうまくいっているかどうかは不明。ただ、上海ディズニーランドは1泊するほどの規模ではないため、基本的には地方・海外から来た高所得層のゲスト向けなのが現状だと推測される。

東京ディズニーリゾートだと、ランド、シー2つのパークを2日がけで回る人の需要があったり、「記念日にシーに一泊」なんてヤラシイ需要があるのだが(別にやらしくないか)、上海ディズニーリゾートは、現時点ではまだ滞在型のリゾートになるまでパーク内外の設備が成長していない。日帰りで十分。

敷地面積や作り方を見ても、これから第2、ヘタしたら第3のパークができ、上海ディズニーランドはそれこそフロリダWDWのように、複数のパークを持つ滞在型の上海ディズニーリゾートへと変貌するだろう。その成長に合わせて、周辺のオフィシャルホテルの需要も増えるだろうし、ホテル事業の収益も増加するだろう。

④ショッピング(グッズ)

原因のひとつは、お土産文化がないこと

日本の場合:日本にはお土産を友人、同僚、家族に買っていく文化が根付いている。東京ディズニーリゾートでは、いわゆるバラマキ用の御菓子類が飛ぶように売れている。定番だとチョコクランチ、あれはうまい!※ちなみに香港ディズニーランドでも、日本製のチョコクランチが販売されている。他の観光地同様、このようなお土産用のグッズ、お菓子が東京ディズニーリゾートには様々用意されており、これが一人あたりの消費金額を押し上げている要因の一つとなっている。

 

一方中国は:中国の友人にもいろいろと聞いてみたが、「日本と違い、基本的にどこかに行ったときに同僚にお土産を買う習慣はない。家族には買っていく場合もあるが、基本的には自分たちが欲しいものを買うのが一般的な考え方」とのこと。これは私の肌感とも合う。もっとも北京の日系企業に勤めている中国の同僚たちは、海外旅行などの際には律義に小さなお土産を買ってきてくれている。これはとても嬉しい。

 

脱線:爆買いは「お土産」ではなく、「代購」

話は脱線するが、日本でよく報道される「爆買い」、電化製品から白い恋人から、大量の日本製品を購入する様は既に見慣れたものだが、あれは「お土産」というよりも、「○○買ってきて」と、友人から頼まれたものを代理購入しているケースが多いようだ。しかもこの「○○」は、例えば「KOSEの雪肌精のCCクリームのSPF 50+」とか、日本人も知らないような詳細な商品ラインナップの指名買い。日本商品のレビューブログ、レビューサイトが中国には星の数ほど存在しており、それらを参考に、商品のスクリーンキャプチャをWechat(中国版LINE)で訪日する友人に送るという。昨年、社員旅行で大阪のドラッグストアへの買い物に同行したが、商品の詳細から値段の比較まで、中国にいる友人とリアルタイムに情報交換している様には脱帽したものだ。どう考えても友人に渡すレベルじゃないな、という量を買う人たちもいるが、これはTaobao(中国最大手のCtoCのECサイト)で売りさばくように業者買いしている人たち。日本商品を個人輸入販売している人は、一般人の知り合いにもけっこう多い。

 

超脱線:中国の同僚に喜ばれるお土産 

⇒扇子とか風呂敷とか、いわゆる 「THE 日本」のものは、現実的な中国の方々に喜ばれない。私個人の経験上喜ばれるのはズバリ

① 龍角散のど飴

② フェイスパック

③ 目薬

④ くまもんグッズ    ここら辺は鉄板。

 

かさばるけど

⑤ フルーツグラノーラ も喜ばれる。

 

日本のお土産お菓子の3大巨塔「東京ばな奈」「白い恋人」「キットカット抹茶味」は、あまりにみんなが買ってくるので、2016年現在北京、上海の方々は食べ飽きてますw

 

閑散休題。

 

マーチャンダイズ解決案:小皇帝を狙ったグッズ、サービスの拡大

 → 男児に刺さる商品の開発、販売を拡大せよ

わざわざデータ引っ張ってくるほどでもないが、中国の人口構成比は、一人っ子政策の影響で若年層が少なく、若年層は男性の比率が高い。要は中国には男の子のちびっ子が多いのだ。一人っ子政策の影響で、たった一人の我が子は跡継ぎとなる男児が好まれたためだ。*1

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 参照:中国国家統計局 2014 から独自作成

 

人口でいう男女比率と、上海ディズニーランドのゲストの男女比率は別物だけどね。現状上海ディズニーランド自体のゲストの男女比率がないので何とも言えないが、事実Treasure Coveという、カリブの海賊をメインテーマに据えたテーマランドを個別に作ったのは、上海ディズニーランドだけ。背景には、男児のゲストにより魅力的なエリア開発の必要性があった(=男児のゲスト比率が高いだろう)と推測される。因みに香港ディズニーランドも、2016年末のアイアンマンのアトラクションや、現在進行中のStar Wars; tommorow land take overなど、同じく男児寄りのコンテンツを充実させようとしている。

一人っ子で両親、祖父母の愛情を一心に受けて育った男児、いわゆる「小皇帝」達が喜ぶようなグッズ開発が肝となるだろう。小皇帝は中国の保護者はなんせ甘いので、この子たちが「欲しい!」といえば買ってあげるしかないだろう。

 

Treasure Coveで海賊グッズはけっこうあったけど、ディズニーの世界観を崩さないレベルでもっとやれって感じ。剣とか、銃とか、光り物で武器っぽいのはこっちの子どもたちは結構好きなようだ。日本でもそうか。どうやら親の世代は武器モノのおもちゃにはあまり抵抗がなく、けっこう街でも見かけるのが以前からずっと印象に残っていた。

街角でも、なかなかエグい戦いごっこをやっているをよく目にする。

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自動小銃を抱えた子どもと両手にトマホークのおじいちゃんが戦いごっこ、ほのぼのとした町の風景。 

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乳幼児がライフルのおもちゃを抱える光景

 

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一緒に行った大きいお友達(30歳)も、思わず武器を手に取りパシャリ。

 

武器関連に限らず、いわゆるロボット物、光り物、乗り物など、男児に刺さるアイテムにはもっと需要があると思うし、ディズニーが保有するMARVEL、STAR WARSといった男児により親和性のあるコンテンツをフルに活用したマーチャンダイズの開発は、まだまだこれから必要になるだろう。

 

男児に親和性が高いという意味では、TOY STORYは非常に優秀なコンテンツだ。

http://vignette2.wikia.nocookie.net/pixar/images/6/68/Toystory_severalcharacterfrom12ad3.jpg/revision/latest?cb=20111125175414

http://vignette2.wikia.nocookie.net/pixar/images/6/68/Toystory_severalcharacterfrom12ad3.jpg/revision/latest?cb=20111125175414

TOY STORYは、これらおもちゃを所有するキャラがそもそもANDYという男の子なので、男この琴線に触れるキャラクターデザインがなされている。車もいれば、宇宙飛行士もいれば、カウボーイもいるので、上記のような男児に刺さるマーチャンダイズを開発しやすいとも言える。男児が多い市場特性を知っているはずなのに、なぜ、上海ディズニーランドはトイストーリーをテーマにしたエリアを作らなかったのだ!香港ディズニーランドと戦略がかぶるからかなぁ。

私が開発に携わっていたら、汎用性の高いPIXARコンテンツに関連するエリアは絶対に入れるけどな。因みに本国アメリカでも、フロリダのDisney's Hollywood StudioにTOY STORYのエリアを開発中。STAR WARSエリア開発と同じく、男性ゲストの取り込みを狙っているのだろう。

https://secure.parksandresorts.wdpromedia.com/media/disneyparks/blog/wp-content/uploads/2015/08/TSL181008.jpg

参照:DisneyParks blog

www.youtube.com

 

参考までに東京ディズニーリゾートの入園者の男女比率は、女性が7割で圧倒的。

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株式会社オリエンタルランド ファクトブック2016より

http://www.olc.co.jp/ir/pdf/factbook2016.pdf

 

本題からずれるが、アナハイム、フロリダ、そして香港、パリまでもがスターウォーズ関連のエリア・イベント開発に力を入れ始めているなか、東京ディズニーリゾートが次の大規模投資を新ファンタジーランド開発に投じるのは、女性ゲストの圧倒的比率によるものだろうと推測される。 逆に言うと、まだまだ取れていない男性ゲストは東京ディズニーリゾートにとってOpportunityだろう。男性ゲストまでカバーできるキャパが立地としてあんのかって話だけどね。

 

*1:そのため女児の妊娠が発覚した場合は堕胎する家族も多かったらしい。女児を堕胎する家族が多かったため、中国では産婦人科で男か女かを事前に通知することを禁止。今でも産婦人科では性別を聞いても、笑顔で応えるだけで、Yes,Noと明確には答えないとのこと