北京で働く男

長く、とっちらかった備忘録

上海ディズニーでは一人あたり20元(約300円)しか消費していない...?

FBのタイムライン上に上海ディズニーランドに関わる興味深い記事が流れてきた。

繁体字で恐縮だが、元リンクは下記。苹果日报(Apple daily)という香港発の新聞の台湾版の記事。

www.appledaily.com.tw

※元リンクをVPNかまさないで中国で開こうとしたら開けなくて、久々に「ヒエッ」ッて思った。まぁApple dailyけっこう過激に反大陸だからな。

 

私の拙い中国語力で意訳すると、

浦東新区商務委員会 副主任の馬學傑氏曰く、「6月の開園以来、上海ディズニーランドは1日平均約2.7万人のゲストを迎えており、1日の平均営業収入は約1,500万元(約2.3億円)に上る。しかし、入園券を含む1人当たりの平均消費金額は、515元(約7,828円)。約500元(約7,600円)の入園券を差し引くと、ゲストがパーク内で消費する金額は20元(約300円)にも達しない。

とのこと。20元で購入できるものはせいぜいペットボトル一本(パーク内だと15元くらいかな?)なので、パーク内で1人当たりが消費する金額は、実質0に等しいというのだ。流石に嘘でしょ??と思ったが、無くはないとも考えさせられた。記事の説明によると、(意訳)

 ローカルのゲストは基本的に園内での消費を避ける。ドライフード(即席麺やビーフジャーキー、真空パックの食べ物など)や飲み物を自分で持ってくる、いわゆる「低價遊園」の習慣は、他のディズニーリゾートとは異なる環境だ。因みに他国のディズニーリゾートの収入は、①約30%がチケット、②約15%が飲食物、③約13%がパークホテル、④約25%がショッピングで構成されている。

ううむ、なるほど。

f:id:bananaslugs:20160815173357p:plain

平均とはいえ、流石に極端じゃないかなぁ、とも思う。データソースが疑わしいが、「中国あるある*1」なので、こうであるという仮定のもと話を進めよう。

因みに東京ディズニーリゾートの、ゲスト1人当たりの売上高構成は以下の通り。

f:id:bananaslugs:20160815173420p:plain

参照:http://www.olc.co.jp/ir/pdf/factbook2016.pdf

このデータにはホテル滞在の金額が含まれていないため、同一線上での比較はできないが、世界のディズニーリゾートの売上高の約25%がショッピングと考えると、東京ディズニーリゾートのグッズ売り上げは、他国と比べて高いことになる。四季折々のグッズ展開、ダッフィーの成功等を考えると頷ける結果だし、この売上構成はかなり理想的な比率になっていると思う。

 

ディズニーパークの売上を構成する下記の4要素

① チケット

② 飲食物

③ パークホテル

④ ショッピング(グッズ)

このうち②〜④が上海のゲストにはあまり響いていないということになる。

 

売上構成要素別に検証する、上海ディズニーのゲスト1人当たり売上高が低い原因

 ①チケット

 →上海のチケットは安い。東京ディズニーリゾートと同じく、段階的な値上げは必ず行われるであろう。東京ディズニーリゾートの値上げに日本では非難轟々だったが、円高の昨今においても、世界のディズニーリゾートの中では低めの値段設定であることも併せて伝えておきたい。単体パークとして世界一の来園者を誇る東京ディズニーランドだが、その割には控えめな値段設定だと(多少ひいき目だが)私は思う。

f:id:bananaslugs:20160815170716p:plain

(2016/08/15参考 JPY換算レート:RMB=15.2, HKD=13.1, USD=101.3, EUR=113.0)

 

②飲食物持ち込みOK(?)

一緒に行った友人の前情報で、「パーク内のペットボトルは高い。15元(約230円)くらいする。未開封の飲み物であれば持っていけるらしいので、水を何本かもって行こう」と教えてもらっていた。市場価格ではミネラルウォーターは3-5元(約80円)だし、そりゃあ自分で持っていくよねと。フードに関しても同様。先日のブログで金額の比較をしたが、市場感覚でいうと、上海ディズニーの食べ物は高いので、自分で食べ物を持ち込んで食べている人をけっこう見た。記事に書いてあるとおり、レジャー施設では飲食物を持ち込んで安く済ませる習慣がある。干し肉、パンに始まり、カップ焼きそばもいたな(お湯は?!お湯はよ?!)。中国の高速鉄道に乗るとよく遭遇するのだが、特におばちゃん達は、旅先の道中用に、まぁ~色んな食べ物を持ち込む。この飲食物の持ち込みがレストランでの消費額を下げていることが間違いない。

 

日本も飲食物の持ち込みは問題となっていた

実はこの飲食物の持ち込み、東京ディズニーリゾートでも議論があった問題だ。日本はもともと、遊園地や動物園にはお弁当を持っていく文化があったが、東京ディズニーランドは、開園時これを禁止にし、入園ゲート外にある「ピクニックエリア」に限り、持ってきた飲食物OKというルールにした。

【公式】ピクニックエリア | 東京ディズニーシー | 東京ディズニーリゾート

※因みに、ピクニックエリアはランド、シーどちらにもあるよ

これはオリエンタルランド会長兼CEO加賀見氏だったか、オリエンタルランドの田丸(元?)取締役たったが、「ディズニーパークの世界観を阻害する」という理由で取り決めた*2ものだ。開園当時のことはわからないが、行楽地にはお弁当文化の日本では、きっと反発の声があったと思う。中国で同じような措置を取った場合、ただでさえ「上海ディズニーの食べ物は高い」という報道が目立つ中、さらなる反発を招くのは間違いないので、上海ディズニーとしては頭の痛いところだろう。

 

もうひとつ、USJでも飲食に関わる問題が起こった。

USJ園内のフードは割高かつ選択肢が少なかったため、一度パークを出て、隣接する商業施設「ユニバーサル・シティウォーク大阪」で食事をする来園客が大量にいたことから、USJは2008年の12月より、園内に基本的に再入場を禁止する措置をとった。こちらもゲスト、周辺の飲食店双方からの反発があったようだ。

www.asahi.com

2005年の古いデータだが、朝日新聞による全国の行楽施設の飲食物持ち込み可否のデータ見っけた。

asahi.com: 弁当、持ち込めますか? 行楽施設、対応さまざま - この記事を手がかりに

 

このように日本のテーマパークでも、パーク内での飲食の売上を守るために、様々な努力があるようだ。テーマパークにおける飲食の売上はそれほど重要であり、持ち込みによって売上機会損失をしているぶん、上海ディズニーにとっては大きな問題であろう。飲食物の持ち込み禁止は段階的に進めていくと推測されるが、やはり反発は免れないだろう。じゃあどうすればいいか?

フード解決案

 A. 高所得者層向けのレストラン施設を充実し、売り上げをそちらで建てる

 B. わざわざお金を払ってでも買いたくなるフードを充実させる

 C. 安価なストリートフードを更に充実させる

 

 A→こちらは前回話した通り。高所得層は金額よりも、クオリティとサービスを求めるので、それを満たすレストランを増やすことで、高所得層の売上を確保する。因みに最初の記事の中にはこんな記載も(意訳)。

上海ディズニーリゾートの2つのホテルに滞在するゲストの、ホテル代を除くホテル内での消費金額(ショップ、レストランなど)は、平均で1人当たり1,000元(約15,200円)

 これは、東京ディズニーリゾートの飲食物+グッズ=6,250円を上回る消費額。高所得者層の消費には、これだけのポテンシャルがあるので、ここを狙ったレストランの充実は、パーク内消費の底上げにもきっと寄与するはずだ。

 

 B→東京ディズニーリゾートが得意とするところで、

  ・季節制に富んだスペシャルメニュー

  ・スーベニア付きフードメニュー

  ・キャラクターを活用したフォトジェニックなフード

など、フード自体に付加価値をつけることで、「これなら払ってもいいな」というメニューで売上を確保する。例えばこんなやつ ↓

http://info.tokyodisneyresort.jp/images2/menu/restaurant/food/7046_1_20160629104831.jpg?mod=20160629104831

パン・ギャラクティック・ピザ・ポート 【公式】店舗別レストランメニュー | 東京ディズニーランド | 東京ディズニーリゾート

東京ディズニーランドはこういったスーベニアカップ(食べたあとおみやげに持って帰れるコップやお皿、ポップコーンのバケツなど)と、シーズンイベントごとのスペシャルメニューの開発力が世界のディズニーリゾートの中でも群を抜いて高い。一応上海にもスーベニアカップのドリンクはあったのだが、売れていないしあんまりかわいくもなかった。「人よりも良い経験・生活をしていることを自慢したい」というインサイトのもと、大量の写真をSNSに投稿する人が多い中国では、写真に撮ってカワイイ、自慢できるという要素は大変重要写真映えするカワイイ、キレイ、おもしろいフードをもっと提供できれば、フードにわざわざお金を払うゲストも増えるはず。また持っていて羨ましいスーベニアカップにもポテンシャルがある。ポップコーンのバケツがそうだが、あれを首から下げて歩いてるゲストを見て、子供が羨ましがって親に「あれ欲しい!」とせがむ光景が目に浮かぶ。(中国の保護者の多くは大切な一人っ子に激甘なので、そりゃあ買ってあげるでしょう)

 

 C→まだ開園間もないということもあり、フードワゴンが結構少なかった。ターキーレッグとかポップコーンとか、レストランよりも安く気軽に購入できるフードワゴンは、ポテンシャルを秘めていると思う。余談だが、この前中国の友人と話していて、曰く「中国には塩味のポップコーンがなかなか見つからない」らしい。キャラメル味など甘いポップコーンが主流で、「ディズニーシーで食べた塩味のポップコーンがとてもおいしかった」と話していた。これは私も気づかなかったが、上海ディズニーにこれが登場したら面白いかもしれない。

f:id:bananaslugs:20160815174715j:plain

上海ディズニーのフードワゴンのデザイン。中国の切り絵をモチーフにしていてとてもかっこいい。このデザインのスマホケースあったら欲しい。

 

長くなった(疲れた)ので、③ホテル、④グッズの検証は次の機会に。

 

*1:中国では、良い結果のデータは実態の4割増し、悪い結果のデータは実態の4割減らしと言われているとかいないとか

*2:世界ふしぎ発見!の東京ディズニーリゾートの回で話していた気がする