北京で働く男

長く、とっちらかった備忘録

上海ディズニーが中国で高いクオリティのサービスを提供できた秘密 & 上海ディズニーランドの改善点

初めに改めて強調しておきたいが、上海ディズニーのサービスは想像以上のクオリティ。中国ではかなりハイレベル。

タクシー乗りゃ話しかけてもシカト、舌打ち。モノ買えばお釣りを放られる。いくら呼んでも来ない店員。スタバには8人も店員がいるのに実働3人位で超並ぶ etc....中国のサービスについて語ると、ていうかサービスではないという日常なのだが、上海ディズニーランドは別格。東京ディズニーリゾートとまでは言わないが、日本人が行っても不快に感じることはほとんどないようなクオリティのサービスを提供している。これには驚いた。

上海ディズニーが中国で高いクオリティのサービスを提供できた秘密

私は2015年の10月にフロリダのWDWに行ったのだが、マジックキングダムを中心に、かなり多くの中国国籍のキャストと遭遇した(WDWのキャストのネームタグには出身地、話せる言語が書かれている)。そのなかのひとり、上海出身のキャストに話を聞いてみたところ、彼女は本来の所属は上海ディズニーリゾートで、2016年のオープンにあたり、キャスト統括の一人としてフロリダでOJTを受けている、とのこと

つまり上海ディズニーリゾートとWDWが提携し、グランドオープニングのキャストを本国で教育していたのだ。サービス、ホスピタリティ部分では正直なところ後進国の中国で、果たして世界最高と誉れ高いディズニーのクオリティを提供できるのだろうかと心配していたが、統括キャスト本国直伝のサービスが、確実に全体を底上げしていた印象。

これは本国ウォルト・ディズニー・カンパニーと合弁で設立した上海ディズニーが、その本国との連携を上手に活用し、中国のウイークポイントを本国のノウハウを用いてカバーした好例で、フランチャイズ形式の東京ディズニーリゾート(オリエンタルランド)には難しい試みだろう。まぁ、東京も幹部スタッフは本国に派遣されていたかな?でもあれだけ多くのキャスト要員が送られたというわけではなかったと推測できる。

そんな大健闘の上海ディズニーランドにも、やはり改善ポイントはある

そんなこんなでいい意味で期待を裏切られた筆者だったが、数えきれないほど東京ディズニーリゾートに行き、各国のパークを回った身としては、生意気にもチョコチョコと「あーここはもうちょっとだなぁ」と目についたポイントがいくつかあった。上海ディズニーランドの今後の成長を期待する意味でも、備忘録として記しておきたいと思う。

 

アトラクションの乗り降りの効率化

バズライトイヤーが特に顕著だったが、あのアトラクションは実は回転率の非常に良いライド(他国では夕方には5-10分待ち)にも拘らず、とにかくキューラインの進みが悪かった。

原因は乗り降り

ホーンテッドマンションと同様に、ライドと並走する動く歩道からゲストはライドに乗る方式なのだが、中国のゲストは、この動く歩道からスムーズに乗り降りするのにまだ慣れていないようだ。結構な頻度でライドを一時停止させていた。

このライド方式は全てのライドを同時に動かしているので、乗り降りのタイミングでライドを停止させると、全てのライドに影響が及ぶ。結果、音や演出が連動しなくなり、「夢から覚める」瞬間を迎えるのだ。

東京、アメリカでは動く歩道には最低一人のキャストが動く歩道の上で乗り降りのサポートを行っているのだが、上海ではそのキャストが配置されていなかった。

前回の記事で、急流下り型のアトラクションRoaring Rapidが平均120分待ちでスキップしたという話をしたが、あの混雑の原因も乗り降りのスムーズさが原因だと推測する。実際に見ていないので分からないが、Roaring Rapidは、アナハイムのGrizzly River Runのライドシステムを基としていると思う。であれば、あのライドシステムは半円型の乗り場から浮き輪状のゴムボートに乗って行くシステムだ。アナハイムではその半円状の乗り場に添って動く歩道が設置されていたが、ブログ等で見た写真には、上海はその動く歩道が導入されていなかった。そのため都度ゴムボートの動きを止めなければならず、その結果があの混雑なのだろう。

これは慣れとキャストの円滑な誘導がモノを言うので、今後キャスト教育によって改善の余地あり。

回転率が落ちスタンバイ(待ち時間)が長くなると、

①パーク全体のキャパシティが低下する(一日の来場者数が減る)

②ゲストの回遊性も下がり顧客満足度にも影響する

③顧客満足度が下がるとリピート率が低下する

④また回遊性が下がるとその分ゲストがレストランやショップに費やす時間が減り客単価が下がる

アトラクションの回転率は、テーマパークにとってまさに死活問題なのだ(一方、東京ディズニーリゾートのキャストのゲストコントロールは間違いなく世界一と言える。昨今の混雑の原因についての考察はまた今度)  。

笑顔を定着させられるか

オペレーションキャストはまだ慣れておらずテンパっていたからかわからないが、一部のキャストは笑顔がまだまだ足りないなと。

今回気づいたことだが、平和的なディズニーの雰囲気が、より対極の表情の印象を強めるからかもしれないが、たった一人でもムスッとしたキャストに遭遇すると、その印象は笑顔のキャストよりも強く残る。これはサービス業全てにおいて共通して起こりうることかもしれないので、注意したい。もともと接客で笑顔が少ないお国柄だからだが、徹底するには時間がかかりそう。 

パーク外の交通整理、案内

交通整理担当のキャストがすごく少なかった。その上なにせ敷地が広いものだから、車で向かった時にドライバーがどこへ向かえばよいかかなり迷っていた。

オフィシャルホテルからのアクセス

トイストーリーホテルから徒歩でパークへ向かう動線がわかりにくい。セキュリティは多かったので治安は問題ないと思うが、夜間は暗く、足元などの安全面が少し心配。(因みにホテルからシャトルバスは運行している)

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こちらがトイストーリーホテルの看板。おわかりだろうか?(世界まる見え風)周りがかなり暗いのだ。因みに「トイストーリーホテル」は中国語で’’玩具総動員酒店”。字面の圧が強すぎて草生える。

浦东空港とのシャトルバスの運行時間

8:00~19:30運行で、1日24往復。開園が8:00-22:00.…使えるか!!空港からのアクセスはタクシーが一番いいが、中国初めての方はぼったくられる確率が高いだろう。道路状況にもよるが、大体80元位あれば30−40分でいけるはず。 

デイタイムショーの城周辺の動線確保

デイタイムのキャッスルショー中、閉鎖区域が多くて、城付近から各エリアへ移動する際に少し遠回りだった。デイタイムショーは城の前で行われるため、城の正面(下図黄色線)とサイドにかけての動線(下図赤線)がブロックされる。ココを閉じなければサイドからショーを鑑賞する人で混雑するから仕方ないか、、、でもここが閉じられて、かなり遠回りをしなければいけないのはちょっと考えモノ。

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予約番号→チケット発券は別の場所でよいのでは?

①荷物検査

②入園ゲートで本人確認&発券

③入園券認証→入園

 

入園ゲートで②、③の手続きを行っていたのだが、ゲートで発券するゲストと、既に発券しているゲストが同じ場所に並ぶのは非効率。それこそファストパス発券形式で、専用機器にキャストをつけて発券と本人確認は別の場所で行うべき。

 

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後ろの既に発券しているおばちゃんから、「なんでこの列だけこんな遅いのよ、あんたたち早くしなさいよ」と文句を言われたのはいい教訓。

(あ?怒 って言っちゃいましたけどw)

 

高価格、高品質のレストランの拡充、高所得者層向けのパッケージブランの導入

中国の方々は食事を非常に大事にする。中国にはとんでもない金持ちが結構な数おり、美味しいものと高品質のサービスには金を惜しまないので、そういった高所得層に向けてのレストランやパッケージプランを提供していくべきUSJのエクスプレスパス(アトラクションを優先体験できるチケットが、何枚か綴りで販売されている。入園パスポートと合わせると、入園パスポートの倍の金額になるプランもある)なんてのは、中国の市場にはとても合った戦略だと思う。日本の市場は、平等を重んじ、お客様は(どなたでも)神様文化が根強いので、価格によってサービスや食事の品質に極端に差をつけるのは良しとされず批判もあったが、こちらでは「金はあんだからもっといい思いさせろ」という層は少なくない。価格によってサービスの質に差が出るのは世界では結構当然の認識。飛行機のビジネスクラス、エコノミークラスがいい例だ。フロリダのWDWでも、滞在ホテルに価格によるクオリティの差が如実に出ている*1

disneyworld.disney.go.com

 これは決して拝金主義というわけではなく、消費者の所得格差が幅広いアメリカ、中国といった市場では、その幅広さに合わせた幅広い価格設定が必要となるということ。昨今インバウンド対応を騒いでいる日本は、基本的に国民総中流社会に合わせたサービス提供をしてきたと思うが、今後中国を含む外国人旅行客の取り込みを目指すならば、幅広い所得格差、とりわけ世界中の「超」高所得者層向けのサービスを整備する必要があるだろう。

 

上海ディズニーでレストラン予約導入はリスキー

プライオリティシーティング(レストラン事前予約サービス)も導入したほういいかも、と考えたがナシですね。中国は高級レストランでさえ予約ブッチ、当日取り消し、時間に遅れるが頻発しますから。デポジット制にすればちょっとは改善するけど、トラブルの方が多そうだからナシでしょう。城内にロイヤルバンケットホールってキャラダイ*2では一応予約できるけどね。電話で事前予約か現地で予約とのこと。(英語or中国語)

 

その他にも、スナック類を増やした方がいいだとか、グッズはどうした方がいいだとか、結構いろいろと考えることがあったが、どうしても書きたいことがあったら記事をアップデートすることにする。

総評としては、上海ディズニーランド、グッジョブ。マジでグッジョブ。もっと頑張ろう。

 

 

*1:20以上のホテルが価格帯に合わせて4つにランク分けされている。一泊あたりの料金はValue:US$ 89~, Moderate: US$ 166~  ,Deluxe Resort: US$ 289~ , Deluxe Villas: US$ 318~  もちろん一泊6万円超の超高級ホテルも有り。オススメは朝起きたらベランダからキリンが見えるDisney's Animal Kingdom Lodge.ホテル自体がアトラクションみたい、らしい。とにかく安く泊まりたいならばPop Century Resort.各パークからのアクセスもいいしね。金のない私はもちろんValueタイプのArt of Animation Resortに滞在。モーテルをちょっとキレイにしてキャラクターをあしらったイメージ。とても良かった。

*2:キャラクター・ダイニングの略。ご飯を食べているとディズニーキャラクターが挨拶をしに来てくれるキャラクター好きにはたまらないレストラン方式。基本高い。